| サブカル的に日本の来し方を振り返ってみる10冊 すべての「カルチャー」は生れたときはサブカルチャーだった。 サブカル的に時代を眺めれば見えてくるものがあるかもしれない。 |
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『日本プラモデル興亡史』 井田博 文春文庫 ¥620 |
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『矢吹丈25戦19勝(19KO)5敗1分』 豊福きこう 講談社文庫 ¥700 |
| タミヤの戦車、イマイのサンダーバード。怪獣プラモデル、ウォーターラインシリーズからガンプラまで、子ども時代にプラモデルを組み立てるワクワク感を味わったことのある人にとって、この本は懐かしさに溢れているはず。著者は戦前から模型店を開き、戦後はいち早くプラモデルの販売を手がけ、昭和四一年には日本プラモデル専門誌「モデルアート」を創刊した人物。つい最近までモデルアート社の社長を務めるなど、まさにプラモデルの歴史とともに人生を歩んできた。同じ文春文庫からはタミヤの現社長による『田宮模型の仕事』という本も出ていて、これもプラモデルファン必読の名著だが、プラモデル全体の歴史を見渡すという意味では本書に軍配が上がるだろう。子ども時代に(お小遣いも少なくて)それほどはプラモデルを買えなかった私のような読者でも、薄れかけた当時の記憶がまざまざと蘇る。時間を忘れて読みふけってしまう本だ。 近藤(新松戸店) |
総パンチ数四六一(総被パンチ数五二〇)、総ダウン数四〇、一試合最多被パンチ数一七七。高度成長の時代を駆け抜け、その終焉と歩調を合わせるように生涯を終えたボクサー矢吹丈の記録である。この本は、ジョーの対戦成績や登場人物の言動から、果てはマンモス西(!)やウルフ金串(!!)のプロ戦績にいたるデータを徹底的に解析し、そこから作品の論評を試みたもの。「データ」というと、冷たい数字の羅列のようだが、この本には作品への愛がある。熱がある。単なる「読み」だけでは浮かび上がってこない「ジョー」の真実の姿が、データを読み込むことで明らかになる。本書からのトリビアをひとつ。丹下段平は「立て、立つんだ、ジョー」と何回叫んだか? 答えは三回。しかもそのうち一回は「心の中の叫び」。残る二回は同一の試合でのことで、他の試合では一切このセリフを口にしていない。この意外な数字にも隠されたドラマがあるのだが、この先はぜひ本書で。 近藤(新松戸店) |
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『『巨人の星』に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ。』 堀井憲一郎 講談社文庫 ¥730 |
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『二十世紀』 橋本治 ちくま文庫上・下 各¥720 |
| 『巨人の星』というマンガは、いま読むと突っ込みどころが多く、現在ではすっかり評価を下げてしまっている。こういう「謎本」の類の題材としてどうよ、という話もなくはないのだが、本書がいわゆる「謎本」と決定的に違っているのは、そういう原典のマヌケさをあげつらうのではなく、それを夢中になって読んでいた少年時代の著者自身のマヌケさを引き寄せて語っているところ。 たとえば、作中で左門豊作がタクシーの運転手に釣りを要求して罵倒されたりしたシーンから、「タクシーでは『つりはいりません』というのがオトナなのだ」と思い込んでしまったエピソードとか。しかしこれがただの思い出の披露に終わらないのは、当時の日本が多かれ少なかれ同じようにオマヌケだったから。というか、ホント男の子ってバカだよなぁ。いまも昔も。要するにタイトル通りの本です。逆だけど。 近藤(新松戸店) |
あの人はこれこれこういう人物であるというのが「人物評」、この本はこういうふうにおもしろい(つまらない)というのが「書評」だとすれば、この本に書かれているのはさしずめ「年評」。一九〇〇年から二〇〇〇年までの百一年を、年ごとにそれがどんな年であったか概括する。一年あたり六ページ弱、四百字詰め原稿用紙にしてわずか七〜八枚でその年を語るのだからずいぶん乱暴な話。たとえば〈漱石『坊ちゃん』の発表〉は、それなりに大きな事件だが、一九〇六年という年をこれで代表させてしまうのは、どうだろうか。橋本治という人はしかしそういうことをやらせたらホント天才的な人で、妙に納得させられてしまう。背後に著者独自の巨視的なものの見方がきちんとあるからだと思う。たった二冊の文庫を読むだけで、二十世紀の日本(と世界)がどういうものだったか、ストンと腑に落ちます。時間のない人も、冒頭の「総論」は必読。 近藤(新松戸店) |
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『一九七二』 坪内祐三 文春文庫 ¥710 |
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『洋楽で育ったぼくらの話』 鈴木カツ 笊カ庫 ¥680 |
| 一九七二年(昭和四十七年)は、何を隠そう(隠してないけど)私が生まれた年である。だからというか、この年にはなにか思い入れというか、興味がある。自分が生まれた年が、どのような時代だったのか。では、本書を開くことにしよう。まず、なんといってもあの「あさま山荘事件」である。当時の風俗を硬軟取りまぜつつ、あまり堅苦しくない内容であるが、本書のかなりの部分を割いていることからも、当時の影響の大きさが窺える。後半部を占めるのは、ロック・フォークブーム。現在と違い、人気コンサートのチケットを取るためにプレイガイドで徹夜の列を作ったことや、情報誌「ぴあ」創刊時のあれこれなどが面白い。高度経済成長も終わりつつあったけれどもまだまだ熱く、それでいて牧歌的な部分も残っていた時代。それでも現在の情報化社会、画一化された没個性の時代への萌芽が見て取れる、そんな一冊。 池田(新松戸店) |
日本のサブカルチャーに多大な影響を与えたという点で、「洋楽」の存在は忘れる訳にはいかないだろう。ジャズもカントリーもロックもフォークも、本はと言えば輸入文化であり、洋楽であったのだ。ただどうも洋楽ファンというのはひたすらマニアックに傾いたり、文化をリードしているという優越感から教条的になりがちだったりで、狭いフィールドで保守的に音楽を語るいけ好かないヤツらが多い。 しかし、日本の洋楽文化の生き字引のような著者と、文字通り洋楽を聴いて育った人たちとのこの対談集は、決して頭でっかちになることもなく、音楽を押し付けがましく勧めたりもしない。もっとリラックスした状態で、自然と耳に入ってくる心地よい音楽を楽しもうというスタンスに好感が持てる一冊となっている。60〜70年代の日本の洋楽文化がどのように変遷していったのか? お勉強でなく、それこそ音楽を楽しむような感じで知ることが出来るかも。 日野(八千代台店) |
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『裏本時代』 本橋信宏 幻冬舎文庫 ¥680 |
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『ときめきイチゴ時代』 花井愛子著 講談社文庫 ¥620 |
| 八十年代を知る人なら、村西とおるという男の活躍を覚えていることだろう。この本は、アダルトビデオなど一度も見たことのない人々にまでその名を知らしめたカリスマAV監督が、日本最大手の裏本チェーンを率いていた時代の物語だ。裏本の世界を通じて村西=「会長」と知り合った著者は、スキャンダル雑誌の立ち上げに青春を賭け、深く彼とかわっていく。裏ビジネスで日本一となった「会長」が目指したのは、金、エロという欲望を手玉に取ることだけでなく、出版と流通に革命を起こすという大きな野望だったということが、怖いもの知らずな若者の視点であざやかに描かれている。この時代から二十年、本が最初に刊行されてから十年。IT社長がマスコミを賑わし、メイド喫茶が話題になる現在の視点で読むと、いろいろなことを考えさせられる。この話の続きは、『AV時代』(幻冬舎)で読むことができる。こちらも同じくらいオススメ。 高頭(聖蹟桜ヶ丘店) |
今や死語となりつつある「少女小説」。私が小学生の頃はまさに全盛期で、どの本屋でもピンクの背表紙のティーンズハートがずらりと並んでいたものである。☆や?が多用され、ほぼ全編が話し言葉、ほぼ恋愛ものオンリーというのが特徴だった。その代表的作家・花井愛子が当時のいろいろを語ったのが本書。他社に対抗すべくジャケットや文体に気を使い、果ては校閲部とも戦っていたという裏事情に少しびっくり。あの爆発的人気のわけは、きっとライトノベルなんてまだなかった時代の、あの年頃の少女たちにぴったりくる手軽さ、身近さがあったんだと思う。巻末のゲストメッセージが特に良い。花井作品のイラストを手がけていた、かわちゆかり、折原みと、くりた陸など人気漫画家のイラストが盛りだくさん。夢を夢見ていた乙女時代に戻れること請け合い(?)である。 小峰(IY船橋店) |
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『「彼女たち」の連合赤軍』 大塚英志 角川文庫 ¥700 |
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『トンデモ本の世界』 と学会・編 洋泉社文庫 ¥800 |
| 「彼女たち」とは軍に所属した女性闘士たちのこと。しかしその中で「総括」の名のもとに処刑されていった者たち。なぜ彼女たちは殺されなければならなかったのか? それは彼女たちが「普通」の女の子の側面を見せてしまった為だ、という大胆な論調で展開される連合赤軍論。かつて日本社会の変革を本気で実践しようと試みた彼等は、同志として相応しくないと見なした仲間をどんどん切り捨てていく。著者はその悲劇性を、思想や戒律に捉われる軍と、闘士である以前に普通の若者、女の子だった彼女等との「乖離」という点に求めている。若者たちがサブカルチャーというものに最も接近する年齢であることを考えると、正に当時のサブカルを形成した時代背景を読み解くことで彼等の悲劇の構造が見えてくるというわけ。そしてその悲劇の構造は宮崎勤事件やオウム真理教事件とも地続きであることを、本書は告発している。 日野(八千代台店) |
「競馬の武豊は反重力を利用して勝っている」「全ての伝染病、寄生虫、害虫などは、宇宙人が創り出した生物兵器の名残である」「太陽は実は冷たい。標高の高いでは気温が低くなるのがその証拠だ」。世の中にはいろんなことを考えてしまう人がいるものである。本人は大まじめで「衝撃の真実」を書いたつもりが、はたから見れば大笑い。そんな「トンデモ本」の概念を世に広めた「と学会」の、これが出発点となった一冊。こんなに笑える本は滅多にない。いや、ホント。掛け値なし。「トンデモ本」へのツッコミの入れ方が絶妙だ。 この本が単行本として最初に世に出たのは一九九五年四月。ひと月前に起きた地下鉄サリン事件をきっかけにオウム真理教の戦慄すべき実態が明らかになりつつあったころで、当時は本書を読んで大笑いしながらも、ただ笑っていてよいものかと、えたいの知れない焦燥感を覚えたものだった。その意味で日本の現代社会を映す一冊である(大袈裟?)。 近藤(新松戸店) |