親が子に買ってあげたい本10冊

『遠い野ばらの村』
安房直子 ちくま文庫 ¥609
『船乗りクプクプの冒険』 
北杜夫 新潮文庫 ¥400
 子供達の間での「ファンタジー・ブーム」は、今に始まった現象では無いだろうが、電話帳位の厚さの本を次々と親が与えるに応じて、本当に読破しているのだとすれば、そのエネルギーには感心してしまう。また映画等の「視覚的イメージ」による手助けの力も大きい、いや、むしろそちらが先行していると言うのが事実であろう。確かに「ロード・オブ・ザ〜」や「ハリー〜」のスペクタル感は、昔の画像技術では描きづらかったし、現在では親も子供もあらゆる視覚的情報をより手軽に吸収出来る環境にあり、頼りにしている。子供に読んでもらいたいのは、何かに浸り込む様な癒しの空気とかの、心地良さであったりする。この本のどの物語も、決してショックやスリルを与えたりしないが、読み終わると気持ちがなんとなくホッと温かくなるのである。身構えず、ただ心静かに対面するだけで感じられるナイーブさを与えてやりたい一冊である。
恵福(東習志野店)
 人間、生活リズムが極度に一定でパターン化して来たりすると、今がいつだか時間の前後感覚が解らなくなったり、疲れてきて「覚醒時」と「睡眠時」の両方が「現実」に思えてみたり、「夢」から「ハッ」と目が覚めると、そこも「夢」の中だったりする体験をした事は無いだろうか。錯綜感である。「無責任作家」という言葉は、ある意味「観念的な深遠さ」を暗示している。表現としての文字の配列と連結は、別に論理的で無くても、真実でも、虚偽でも構わない。秩序的意義とかは文章表現の核心ではないのである。だからハチャメチャな部分と理屈の部分が入り混じっても、作家に責任なんかないし、どう表現しようが自由な立場から出発しているのだ。けれどこの作者は、決して全てを放り投げてはいない。物語の描写はとても緻密である。プクプクの面白さは、ちょうど小さな子どもを腕にぶら下げて振り回した時の「キャーッ」という声のごとくである。
恵福(東習志野店)
『ちぐはぐな部品』
星新一 角川文庫 ¥504
『ロウソクの科学』
ファラデー 角川文庫 ¥380
 SFとは奇妙である。「サイエンス」は客観的なのに、「フィクション」という主観的操作が加えられてしまう。幼少の頃、えほん百科で「21世紀の交通」のページを開くと、60年代のアメ車からタイヤを取り除いたボディが宙に浮いているイラストが載っていた。そう言えば、テレビアニメの「スーパージェッター」に登場した「流星号」の方が、子供である自分にはよりリアルに感じられた。イメージが頭に浮かぶのである。これは大事だ。子供の創造性は科学の可能性から、空想をトンデモ無い方向へ膨らませる行動で成長する。「もし、こんな夢が実現したら…、いや、でも、こうなっちゃうかも…。」星新一の物語は、子供の「推理力」や「柔軟性」を引き出す道先案内人である。独特のショートストーリーの連続はクイズを解く感覚に似ている。連続と言えば、35年位昔、ラジオの連続ドラマで毎晩楽しみに聞いていたのが星新一だった。ノスタルジーですなあ。
恵福(東習志野店)
 この本にでてくるロウソクは、どこにでもある普通のロウソクです。このロウソクに火をつけ、燃やし、そこから煙が立ちのぼる。この誰もが一度は見た事があるだろう現象のなかで多くの元素の変化が行われていることを意識したことはありますか。そもそも何故ロウソクは燃えるのか。煙の正体は何か。そのひとつひとつを丁寧に、6つの講義にわけて説明しているのが本書です。本書の内容は一八六一年に行われたファラデーの講義をそのまま再現していて、1つの事象を証明する為に2つ3つの実験を行っていきます。読み進めるうちに中学や高校の授業で行なった実験が思い出されます。今更ながら、その実験がどんな意味を持つのかに気付くこともしばしばです。これからそれらの実験を行う学生の皆さんには、特にこの本をお薦めします。ただ教科書通りに実験するよりも何倍も楽しく実験ができるはずです。
鈴木(千城台店)
『ルート225』
藤野千夜 新潮文庫 ¥540
『ねこに未来はない』
長田弘 著 (角川書店)
 弟を迎えに行って家に帰ってきたら何かがおかしい……。「普段の世界」の様だが両親が居ない。気が付いたらちょっと違う世界に迷い込んでいた。しかし弟のテレカで家に電話をかけると母親が出る。やっぱりおかしい。受け入れられない現実と受け入れたくない現実と受け入れなくてはいけない現実の中で姉弟は不安になり、戸惑いながら進んで行く。非現実的なのに現実っぽいのはありきたりの姉弟のやりとりや生活、友情関係がとてもうまく描かれているからだろう。景色や食べ物の匂いまで伝わる、容易に想像出来る普通の日常。…でもパラレルワールド。これ、本当は本当の話なのかもしれない。どこか懐かしい気持ちになりつつ、そして、これからも頑張れ!と見守りたくなる作品。今日家に帰ったらパラレルワールドだったらどうしよう、一人暮らしでも異変に気付くだろうかと余計な事を考えながら帰路につく。今居るこの世界を大切に楽しみたい。
横山(聖蹟桜ヶ丘店)
 まだカラーテレビが珍しかった時代に、若くて貧しくて、でも夢と愛情でいっぱいの夫婦が、ねこを飼うお話です。日本を代表する詩人によって書かれ、何十年もの間、多くのねこ好きに親しまれています。幸せな若夫婦は、ちょっぴり苦労してねこの飼い主になりますが、すぐにいなくなってしまったり、怪我をしたり。今の時代では考えられない自由で大雑把な飼い方にちょっと面食らいます。でも、それは「飼う」というより、「共に暮す」という感覚に近い生活なのかもしれません。いのちというのは、普段思っている以上に強くてはかなくて、そして愛しいもの。身近な人や生き物の死を知ってしまった子どもにも、これから知る子どもにも届けたい本です。なんといってもすばらしいのは、明るいリズムの文章、ユニークで愛らしい比喩表現!魅力的なねこたちに心を奪われつつ、日本語の豊かさに心を動かされます。
高頭(聖蹟桜ヶ丘店)
『日本の昔話』
柳田国男 新潮文庫 ¥380 
『しろばんば』
井上靖 新潮文庫 ¥743
 こぶとり爺さん、わらしべ長者、ききみみ頭巾。誰もが幼い頃読んでもらったり、テレビで見た記憶があるはず。読んでいるうちに、何だか懐かしい気持ちになってしまう。昔話の世界では動物がしゃべったって、鬼が暴れたって、あまのじゃくが悪さをしたっていたって普通。だからこそ、カラッとした明るさ、平和な空気があって安心して読めてしまう。まるでファンタジーのようで、子供の頃と違う視点で楽しむことができるのだ。しかも、一つ一つの話はとても短くシンプルでまさに大人のための昔話になっている。明治になって近代化が進み、廃れそうになっていた各地の昔話を収集したのが、著者だという。考えてみれば彼が収集しなければ、まんが日本むかしばなしも放映されておらず、日本から昔話がなくなっていたかもしれないのである。当時は変な趣味といわれていたらしいが、後の世になってみれば大喝采ものである。
小峰(IY船橋店)
 この本を読むと懐かしく感じます。きっと、主人公の浩作少年の気持ちと自分の子供時代の気持ちとが重なるからではないでしょうか。子供の時にも読みましたが本当に浩作少年に共感したのをおぼえています。
 浩作少年は父母のもとを離れ曾祖父の妾であったおぬい婆さんと二人、土蔵で暮らしています。村人の白眼視に絶えるおぬい婆さん。そのためか、浩作に異常なまでの愛情を注ぎます。そんな浩作とおぬい婆さんの生活の様子も読みどころです。さらに、自然やゆっったりとした時間の流れを感じることができます。浩作少年と共に自然のなかでおぬい婆さんの愛情を受け、学び成長しませんか。読んだあとはきっと、心が成長しているはずです。
平出(本八幡店)
『空飛び猫』
A・K・グウィン/村上春樹 訳 S・D・シンドラー 絵 講談社文庫 ¥650
『グレイがまってるから』 
 伊勢英子 中公文庫 ¥560
表紙を見て、またはタイトルを見て、中身が気になった方は躊躇せずお買い求め頂きたい。期待を裏切らない作品です。表紙を見ればわかることですが、とにかく猫たちの愛らしいこと! ただでさえ愛くるしい猫たちですが、その彼らにふわふわの羽がついているんですよ? ハンクとスーザン兄弟のように、彼らの羽を撫でてみたい! と思う人は多いはず。犬派の私でさえそう思うのだから、猫派の人は堪らないでしょう。毛や羽のふわふわ感が伝わるシンドラー氏のイラストに加え、村上氏の美しい日本語も当然秀逸です。どんなに原作が素晴らしくとも、訳がイマイチだったが故に魅力が半減してしまうという本は少なからず存在します。しかし本書は原作の持つ温かさ、優しさ、素敵な言い回しまで丁寧に訳されていて、そうした心配は一切無用です。性別、年齢問わず大切に読める一冊です。
永守(八千代台店)
 絵描きの家に犬がやってきた。大きくなるぞ! という未来を想像させる太い足と、印象的な目。その犬はふかふかした毛並みからグレイと名づけられた。この作品はグレイと4人の家族が、風を感じて、空を見上げてグレイと一緒にすごす5年とすこしを描いた(絵描きの絵がとても素敵なのです!)3作の1冊目です。毎日散歩に行き、絵描きと娘たちはグレイの目線で新しいことを発見する。それは今まで知らなかったことだらけ。そんな共に生きていく大事な家族。愛玩するだけじゃない、家族としてのグレイ。絵描きから、そしてグレイが見守る家族の姿に、私は何度読んでも涙が止まらなくなります。ペットを飼ったことのあるすべての人に読んでみて欲しい。そしてこの後2作続くグレイの生活を、どうか見守ってください。
高橋(聖蹟桜ヶ丘店)