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食欲増進 文庫十冊 |
| 食欲増進、と書いてあるが、ここで紹介する文庫たちを読みながらゴハンを食べても、倍の量が食えたりはしない(笑)。 私は、池波正太郎の仕掛け人・藤枝梅安シリーズを読むと、無性に湯豆腐が食べたくなるのだが、なにも考えずただ食すそれよりも、作品に浸ってから味わうそれは、味に違いがでるものだ。 文庫を楽しみ、食も楽しむー。 書籍の楽しみ方として、こんな素晴らしい方法もあることを知ってほしい。 われわれが思いを込めて選んだ文庫たちを、どうかご賞味いただきたい。 宇田川(本店) |
| 散歩のとき何か食べたくなって 池波正太郎著 新潮文庫 ¥514 | |
| 給料日前でお金がないので、私はいま、チョコレートで飢えを凌いでいる。よりにもよって『散歩のとき何か食べたくなって』を目の前にしてである。この本は視覚と想像力に訴えかけて私の飢餓感を増長させる。 表紙をめくると最初に写真が載っている。 私はここに乗っているような大きな海老のにぎりなど、食べたことがないので、ため息が出てしまう。しかも本文を読むとチキンライス、天ぷら、どじょう、あぶり餅にフランス料理と何でも揃っている。さらに、巻末には紹介された店の住所や電話番号が載っているのである。おぉ、これがあればいつでも旨いものがたべられるのね・・・と思ったのだが、この本を買った人がみな、池波正太郎のように臆することなく店にはいれるかどうかは、また別の問題なのだけどね。 青木(千城台店) |
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| 魚の目利き食通事典講談社編 講談社+α文庫 ¥1480 | |
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物語だけではなく、文庫の特製を活かした実用的一冊をぜひともご紹介したい。 美味い魚、食ってますか? と訊かれたら、はいとおきどき、と答えることはできても、じゃあ美味い魚、自分で選んでますか? と訊かれたら、いやそれは・・・となってしまう。魚はただ食べても美味いものだが、やはり自分で選んだものの方が、美味さも増すというもの。しかし、魚の良し悪しなど、いきなり見てもなかなか分からないものである。ツヤがある、身がしっかりしている、形がいいくらいは判断できても、もうひとつ先の決定打がほしい。カラーページ満載の本書は、選ぶ決め手、おいしい季節、どんな調理が最適かを分かりやすく教えてくれる良書である。夕飯はなにを食べようかと思っているなら、出かける前にぱらぱらめくると、献立が即座に決まること請け合いである。 この文庫をそばに置いて、さあ美味い魚を食べようではないか! 宇田川(本店) |
| すきやばし次郎 旬を握る 里見真三著 文春文庫 ¥905 | |
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日本が世界に誇る食文化の華「鮨」。特に、江戸前握り鮨の見た目の美しさと美味さに触れれば、日本人に生まれてホント良かったな、と思う人はきっと全国8千万人はいるに違いない(←どこで調べたんだよ!) 本書は東京銀座の名店中の名店「すきばやし次郎」の店主にして当代一の鮨職人と名高い小野二郎の、芸術的職人芸と、カラー写真による鮨ネタの図解、そして含蓄触れる鮨ばなしが楽しめる究極の鮨読本。 まずこの表紙を見よ!これは日本文庫史上、もっとも食欲をそそる素晴らしい表紙写真だ。この芸術品を握り続けて半世紀。しかしそこには職人としての意地やプライドをこれ見よがしに見せ付けるような頑固親父の姿はない。むしろ丁寧な口調で、鮨の奥深さを説き、七十歳を過ぎてもまだまだ謙虚に精進し続ける主人には感動すら覚える。 本当の意味で「粋」な江戸職人の握った、粋な味を、まずは目で堪能して頂きたい。 日野(八千代台店) |
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最期の贅沢 週末はカレー日和 小野員裕著 講談社+α文庫 ¥800 |
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鮨の次はカレーといこう!というわけで、突き出る原を気にしながらも食い倒れバカと化した私目がお次に紹介しますのは、究極(かどうかはわかんないけど)のカレー読本です。 本書の案内人は、全国各地のカレーを食べ歩き、カレーライス研究の第一人者にして現横浜カレーミュージアムの名誉館長小野員裕(かずひろさんって読むんだって)。 思い出したようにふと食べたくなるカレーライス。特別なご馳走として捉える人は実はそれほど多くないと思う。お手軽で気軽な食べ物としての佇まいが、却ってカレーに親しみと愛情を抱かせるのだろう。 そんなカレーの性格ゆえか、本書もカレーへの愛情は溢れんばかりだけど、それほど大上段に構えずに、どことなくのほほんとしたエッセイになっているところがイイ。 自分で作りたい人には本格カレーレシピが掲載されてるし、表紙も◎!巻末には全国おすすめカレー店リストもあるぜよ! 日野(八千代台店) |
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芋粥(「羅生門・鼻」収録) 芥川龍之介著 新潮文庫 ¥324 |
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芋粥とは、平安時代、庶民は食べることができなかった食べ物であった。本文に「山の芋を中に切り込んで、それを甘葛の汁で煮た、粥の事を云う」とあるから、そういうものなのだろう。多分、現代人である私たちが食べてもそう旨いものではあるまい。 しかし、そうは思うのだけれど、不思議なことに、読んでいるうち芋粥が食べたくて仕方なくなるのだ。断っておくが、長芋やら山芋がすごく好きだというわけではない。だけど、五位が「芋粥を腹いっぱい食べてみたい」と思うたびに、私も「芋粥(食べたことはないけれど)を腹いっぱい食べてみたい」と思ってしまう。多分、すごく何かを食べたいと思うことは、時代とか、環境に関係なく、とても幸せなことなのだ。 最近、「何が食べたい?」と訊かれて、「なんでもいい」と答えた人は、是非読んでほしいなぁと思うのである。 青木(千城台店) |
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イギリスはおいしい 林望著 文春文庫 ¥466 |
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いわずとしれたリンボウ先生の、日本エッセイスト・クラブ賞受賞作である。未読の方の中には「?」とタイトルをみて思われることでしょう。イギリスの食事が概して美味でないことが世界の定評であることは、リンボウ先生も本書の中で認めておられます。 イギリスで実際に生活したことのある人なら、美食と程遠い国民性に、あんなにも近くてまったく対照的なフランス人との違いに思わず納得してしまうのです。 本エッセイ中、イギリスの文化に対する素朴な疑問などを解き明かしつつ、うわー、食べてみたいな、作ってみようかな、と思わせられる「レセピ」が載っていて、初めに読んだ頃に付けた付箋のページを見つけて懐かしくなりました。 片山(本八幡店) |
| 料理人 H・クレッシング著 ハヤカワ文庫 ¥686 | |
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ある日、イギリスの田舎町に自転車で現れた謎の料理人。デモーニッシュなまでの腕前を持つ彼の料理は、素晴らしく美味だった、至高の料理を目指す彼は、自分が存分に腕を振るえる環境を整えるため、あらゆる手段を使って他人を蹴落とし、伸し上がっていこうとする。 料理を題材にした一種のピカレスク・ロマンだが、その「奇妙な味」は、スタンリー・エリンやサキやロアルド・ダールとも、微妙に違う。とにかく、主人公の美食にかける情熱は、半端ではない。 得意料理はジビエ(野鳥)の詰め物(栗が主体)系とブロス(肉汁)ベースのソーズ。全篇、まさに美食のオンパレードで、腹が減ること請け合いだ。 もっとも、あまりにこってりと饗せられる料理の数々に、読み終わるとお茶漬けが恋しくなったりもするが。 茶木(本店) |
| 食は広州にあり 邸永漢著 中公文庫 ¥505 | |
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食のエッセイなら、開高健『最期の晩餐』や丸谷才一『食通知ったかぶり』、吉田健一『舌鼓ところどころ』など、名著と呼ばれるものが他にもある。 しかし本書が他と大きく違うのは、食べることよりもむしろ、作ることに比重が傾いている点だろう。 文芸春秋の社長であった池島信平は、著書の食事の招待を心待ちにし、どんな無理をしてでも、誘いがかかると喜んで出かけていったという、それも、夫人のみならず親しい友人を何人も同伴して。名付けて「邸飯店」。仕舞いには、当時の大家や流行作家を誘い、「邸飯店にメシを食いに行こう」と接待に使っていた節もある。著者の料理の腕前が、並々ならぬものであることの証左だろう。 疑いを抱くようならためしに本書を読んでみるといい。中国料理の奥の深さと玄人はだしのその腕前に、感嘆の声を漏らすこと請け合いだ。 茶木(本店) |
| 魯山人味道 北大路魯山人著 中公文庫 ¥743 | |
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題名だけ見て、なんとも敷居の高そうな、と手を引っ込めかけたお客様。ちょいとお待ちくださいませ。魯山人と聞くと、人気コミック『美味しんぼ』の某キャラクターが浮かんでしまうわたくしでございます。肩に力の入ろうはずもございません。では、頑固ジジイのグルメ自慢かというと、そんなものを選ぶ理由もないわけで。目次をご覧ください。豆腐、お茶漬け、鍋料理と、われわれの食卓に普通に上がるものばかりでございます。これは食の達人が、食に手間を惜しんではいけないよ、美味しいものは美味しくいただこうという、当たり前でありながら、現代人の多くが忘れてしまったことを繰り返し説いてくれる好エッセイなのでございます。夏の午後、麦茶を飲みながら、ぺらぺらめくっていただくと、きっとお腹が空いてくると思います。私のオススメは、まぐろ茶漬け。美味です。 宇田川(本店) |
| 中国怪食紀行 小泉武夫著 光文社知恵の森文庫 ¥876 | |
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本書を見てー食欲増進じゃねえだろ!とツッコミを入れたお客様。いやいや、確かにあなたにとってはゲテかもしれないが、世の中には、これらの珍品をウヒョウヒョ云って口にするひともいるのである。あ、またウゲェ〜って顔したでしょ。でも考えてみると、納豆、ぬか漬け、くさや、すっぽん、海外のひとに云わせると、うなぎなんかも得たいが知れないのでご勘弁らしいが、日本にもなかなか個性的な食の文化が存在するのである。この一冊をげらげら笑いながら読んで思うのは、じつはわれわれは、本当の美味にはそれほど巡りあっていないのではないかということ。これはさすがに口にしないだろーという反応は、イタズラ好きなカミサマが、あんまウマイもんばっか喰ってるとバカたれになるからと仕掛けた、われわれへのトリックなのかもしれない。 食欲増進セレクションの番外編として、クセになる一冊のご賞味をオススメする。 宇田川(本店) |