元気がでる

十冊!

 みなさん、元気ですかーっ!(猪木みたい)この平成大不況+戦争や凶悪犯罪の連続で世相は益々暗くなる一方。こんなご時世に元気になれっていわれてもねえ・・・ダーッー!そんな辛気臭い話はもうやめやめ!
 
それから、あの「癒し」とか「ヒーリング」とかいう言葉もこの際やめ!そんな一時しのぎなんかしてどうする!ホントに元気になる為には、もっとエネルギーが必要だ!
 
というわけで、現場の書店員が選ぶ夏の百冊、最初に紹介するセレクションは、実行委員が選定した「読むと元気が出る10冊!」。これから紹介する10点の作品を読み込めば、まるでカラダとココロの延命装置が再び始動するような不思議な高揚感と充足感を得られるハズ。そんなエネルギーに満ちた作品ばかり。
 
疲れているそこのあなたも、落ち込んでいる君も、このセレクションを紐解いてエネルギーを吸収してください。
 
本を読んで元気になるということは、読書する上で最大の収穫と言えるでしょう。

   日野(八千代台店)






 始祖鳥記 飯嶋和一著 小学館文庫 ¥695

 本書は、天明三年(一七八三)、世界で初めて空を飛んだ“鳥人”備前屋幸吉の生涯を、鮮やかに活写した傑作歴史ロマンだ。
 嵐を超えずに咲いた花などない。一度決断したら、たとえどんなことがあろうと、腹を固めて流れ続けることだ。迷わずおのれを生きる――。
 幸吉のひたむきな生き様に触れ、自らを省みて、忸怩たる思いに奮い立った人々。腐りきった幕府の悪政に対し、敢然と立ち上がる彼らの熱き闘いこそ、本書の最大の読ませどころである。
 これは、すでに蓄えた力に安住している現代の日本人に、忘れかけていた情熱とひたむきさを呼び覚ましてくれる一冊だ。どこまでも熱く、限りなく力強い、傑作中の傑作である。己の全存在を懸けて夢をまっとうした男の物語―読んで元気が出ないはずが、ない。

   茶木則雄(本店)

 蘇える金狼 大藪春彦著 角川文庫 各¥700

   気持ちの落ちこみがあまりに深いとき、ユーモアやハッピーエンドの物語は逆効果になる。こんなときは、心にくすぶるどす黒い焔を託し、完全燃焼してくれる主人公が活躍する、そんな物語が必要だ。本書の主人公――朝倉哲也は、まさに格好のキャラクターと断言できる。昼は平凡なサラリーマン、夜は企業乗っ取りを企む孤高のダークヒーロー。同僚を欺き、女を利用し、重役を強請り、大金を手にしては、悔恨も憐憫もなく、野望の階段を駆け上がるその姿の美しさよ。日々の生活にあふれる、どうにもならない重圧、逃げ場のない鬱屈、やりきれない不都合――それらが総出で何度となく襲いかかってきたとしても、『蘇える金狼』がある限り、押し潰されることは絶対にない。本書を読み終えたとき、絶望に硬く閉ざしていた口唇から、狼のように白く鋭い歯をむきだすあなたが、きっと現れるはずだ。(ちなみに表紙は、以前の松田優作版のがいいんだけどな〜)

   宇田川(本店)

 火神(アグニ)を盗め 山田正紀著 ハルキ文庫 ¥840

   日本人サラリーマン四人が、要塞と化した原子力発電所に潜入を試みる――というだけでもおもしろそうだが、彼らが会社のお荷物であり、窓際にさえいられない超ダメダメ男たちという点が、天才作家――山田正紀の凄いところである。本書は一級の冒険小説にして、ダメ男たちの復活を描く成長物語だ。かつてしょぼくれていた彼らが、「俺達サラリーマンを甘く見るんじゃない。何がプロだ。所詮スパイなんか滓だ。まっとうに生きているサラリーマンに勝てるはずがない」と云うところなど、疲れた心にガツンと効くカンフル剤として、絶対の自信でオススメする元気印の傑作小説である。満員電車のお供に最適、いや全サラリーマン必読の一冊と断言しよう!もし本書が気に入っていただけたら、山田正紀の同系列の傑作『謀殺の弾丸特急』もお読みいただきたい。あいにく現在は入手困難な商品だが、おもしろさは絶対保証なので、ぜひ!

   宇田川(本店)

 四十回のまばたき 重松清著 幻冬舎文庫 ¥533

   この文庫100冊を選定するにあたって、当初重松清の名を入れるつもりはなかった。ある意味当たり前すぎるし、本屋にとって思い入れのある作家上位にランクされること間違いナシのこの作家はきっとどこの書店でもこうした企画で必ず加えられると思うからだ。しかし、どうしてもこの1冊だけは…。
 事故で妻を亡くした翻訳家圭司は、ひょんなことから妻の妹耀子と同棲を始めることになる。この義妹、寒い季節が到来するとなんと「冬眠」してしまう癖の持ち主なのだった。
 その耀子が妊娠。困り果てた圭司に仕事の依頼が。粗野で暴力的な、アメリカ人作家の新作の翻訳。作家の来日騒動を軸に、圭司と作家の不思議な友情が育まれていく様が実にユーモラスで味わい深く描かれる。ラストにはちょっとびっくりする展開が待っている。
 別に泣ける作品ではないけれど、重松清の隠れた傑作として、100冊に堂々の仲間入り。これ読むとホントに元気になれるよ!

   日野(八千代台店)

 寝ぼけ署長 山本周五郎著 新潮文庫 ¥476

   多くの方が、山本周五郎をすぐれた時代小説の書き手として、認識していることと思う。だが、この作家が自分の持ち味を最大限に活かした探偵小説を書いていたとしたら-―それも江戸川乱歩が夢中になったほどの作品だとしたら、これはぜひとも読んでみたいと思うだろう。本書は、山本周五郎が覆面作家として(途中でバレたが)『新青年』に書いた、連作短編ミステリである。山本作品に貫かれた、人間かくあるべし、というテーマはここにおいても顕在で、人情物語としても名シーン、名セリフにあふれた逸品ぞろいである。私の一番のオススメは、『十指十目』。読後、お人好しでぐぅたらで無能と評判の「寝ぼけ署長」――五道省三が、きっとあなたのお気に入りの名探偵に名を連ねているはずだ。余談だが、この物語はかつて若山富三郎主演でテレビドラマ化されたことがある。私などその印象がとても強いので、みなさんもよかったら、そんなイメージで読んでみてはいかが?

   宇田川(本店)

 ボクの音楽武者修行 小澤征爾著 新潮文庫  ¥400

   世界のオザワが二十六歳の頃に書かれたエッセイ。驚くべきは、日本からスクータ持参でヨーロッパへ乗り込んだことである。何と斬新な!この発想こそが芸術家なのか、はたまたこれが書かれた当時はそんなに驚愕するほどのことではなかったのでしょうか?目的を持ち、誇りを持つ人の強さを感じずにはおれない。なるべくして、「世界の人」になったんだと思うのである。単身ヨーロッパに渡り、不安や戸惑いがあったろうに、ここに描かれる一人の青年から感じるのは、マイナス要素ではなく、限りないプラスのパワーである。打ち込むものに対する集中力のスゴさは想像を超えているが、時には美女の姿にみとれ、嬉しいことがあった日に花を買う余裕。素敵だな、と思う。この本との出会いが今後を考える上でのヒントになれば、と思います。後悔なしの一冊。

   片山(本八幡店)

 アタシはバイクで旅に出る。 国井律子著 笊カ庫 ¥600

 

 これは雑誌「クラブ・ハーレー」の連載コーナーの文庫化であります。
 愛しのマシンに跨り、時には凄まじい天候の中でもひたすらにマシンを信頼し、走り続ける姿からは元気をもらえることマチガイナシ。読んだ後、今、自分が置かれている状況について、「好きなこと」を今いちど真剣に考えてしまうでしょう。
 バイク乗りの間でなくとも知る人ぞ知る有名人の彼女の魅力がわかります、
 写真もいい。章末のガイドブックもお役立ち。
 とりあえず、餃子、食べに宇都宮まで行きたいなー、と思うのであります。
 食欲も刺激され、本能に正直になる幸福な一冊。

   片山(本八幡店)

 ガンジス河でバタフライ たかのてるこ著 幻冬舎文庫 ¥648
  海外ひとり旅、誰でも一生に一度はトライしてみたいと思うだろうが、実際には実行に移す人はそれほどいないだろう(私もです・・・)。
 しかしこの人はやった。二十歳で初めて行ったひとり旅をきっかけに、仕事のかたわら、有給休暇をフル活用して実に二十七カ国、世界中を駆け回っている。格安航空券の購入から始まって、お決まりのコースなど一切なしの完全単身いきあたりばったり旅行。
 「いきあたりばったり」だから、当然不便さや身の危険がつきまとう。しかし彼女の怖いもの知らずで破天荒な性格(本人は小心者と言っているが全然違う!)が幸い(災い?)して、アッと驚くようなコミュニケ手段(土下座や川へダイビングまでしちゃうのだ!)で困難を切り抜けていく様は読んでいて痛快かつ爆笑モノ。
 危険を冒してまで一人で気ままな旅を続けるのは、「世界の人々と仲良くしたい」という、言うは簡単だが誰にもマネ出来ない大きな野望(?)があるからだ。目指すは世界二百カ国!

   日野(八千代台店)

 ワイルドサイドを歩け ロバート・ハリス著 講談社+α文庫 ¥680
   学生の人達
 普通に働いている人達
 希望はあるが、今特に何もしていない人達
 そして何もしていない人達
 ぜひ読んで下さい。
 彼自信、三作目の自叙伝、人生って何でも自分が思ったりやってみる事が大切だし、それが満足するロバート・ハリスからのメッセージ本です。
 ルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」を聴きながら「人生の百のリスト」を書いてみては?
 「人生の百のリスト」とは、一生のうちにやっておきたいことを一つ一つ、全部で百書くことだ。誰でも小さい頃、似たような事をしたと思う。
 「海外で生活する」「空を自身で飛ぶ」etc読んだあときっと何か動きたくなる一冊です。

   和田(瑞江店)

 不肖・宮嶋 踊る大取材線 宮嶋茂樹著 新潮文庫 ¥871

 

 破天荒な報道カメラマンとして業界にその名を轟かす男。家族よりも、いやテメエの命よりもカメラが大事な男(多くのカメラマンはそうだろうけど)。決定的瞬間をとらえる為なら手段を選ばない男。自衛隊内部から海外紛争、果ては南極から女優の入浴現場にまでおしかけるその武勇伝は、数々の著作にてオモシロオカシク語られ、90年年代後半あたりから人気が急上昇。
 さて本書はその不肖・宮嶋氏の活動記録の集大成ともいえる内容。周囲から顰蹙を買おうが何しようが、世紀のスクープを追い求めて奔走する中年(失礼!)カメラマンの姿が実にカッチョイイ!読む者を熱く、元気にさせてくれるということでは当コーナーの他のセレクションにも負けないけど、別コーナーの「熱い男のノンフィクション」に入れてもよかったな。ま、それはいいとして、ぜひ読んでください!
 あっ、因みに解説は茶木則雄さんです。こちらも併せてお楽しみください。

   不精・日野(八千代台店)