| 眠らせない! 徹夜本 十冊 |
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感情教育 中山可穂著 講談社文庫 ¥620 |
| 読み始めたら朝になってしまった小説はいくつかあるが、恋愛小説というジャンルに限ると、中山可穂の作品以外は思い出すことができない。中でもとりわけ、徹夜度が高いのがこの作品だ。 主人公は別々の場所で育った二人の女だ。それぞれの複雑な生い立ちと恋愛経験が語られる第1章と第二章。ようやく二人が出会い、宿命的としか言いようのない恋に落ちる第三章。物語は次々に新しい展開を見せ、休む間を与えられない。まるで自分自身が運命の恋の中にいるかのように、小説の中に引き込まれてしまう。 下手な恋愛経験より、夜を徹してこの小説を読んだという体験の方が、よほど人生の中で重要な出来事なのではないかと思う。こんなにまで夢中にさせてくれる小説を読むためならば、睡眠時間なんていくら削ったって惜しくはない。ああ、これからこの文庫を手にする人がうらやましくて仕方がない! |
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ジョッキー 松本剛史著 集英社文庫 ¥632 |
| タイトルの「ジョッキー」から分かる通りこれは競馬の騎手が主人公。 競馬は興味ないよなんて人でも大丈夫。 何せ、私は競馬の知識ゼロだが、本当に楽しめた。 ストーリーの面白さもさることながら、主人公が魅力的。ジョッキーの「中島八弥」に惚れました。 迷ったり、悩んだり、時には間違いを犯すが、しかし自分の信念を貫く。そんな「八弥」を応援してしまうこと間違いない! また、馬も可愛い。「オウショウサンデー」にも魅せられてしまった。 ああ、競馬ファンってこういう気持ちなのね。本にハマると同時に競馬にもハマってしまうかも・・・。 平出(本八幡店) |
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神様がくれた指 佐藤多佳子著 新潮文庫 ¥819 |
| よくないと分かっていても、どうしてもやめられない事ってありますよね。人それぞれ煙草やお酒、ギャンブル等々。この小説の主人公たちはまさにそう。スリを止められないスリ師にギャンブルを止められない占い師。そこに愛情の足りない少年少女が加わって、この偶然で歪んだ人間関係は一体どこに向かうのか。それだけでも目が離せないのに、このスリ師と占い師の指さばきは絶品。「自分にもできるかも…」なんて錯覚するほど鮮やかでとても魅力的。読み始めたら止められない。どうしてもやめられない…。 さらに、スリ師と幼馴じみの淡い(?)恋の行方もまた気懸かりの一つ。手先は器用なのに彼女の事になると途端に不器用になる彼から目が離せなくなるのは私だけではないはず。犯罪に興味をひかれる罪悪感に心拍数が上がり、もどかしい恋につられてさらにドキドキ…。あぁ、最後まで読んでしまわなくては。こんな状態じゃ寝れません! 鈴木(千城台店) |
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怖い本1 平山夢明著 ハルキ文庫 ¥693 |
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先頃完結した実録怪談集『新耳袋』は絶大な人気を博したが、それに劣らぬ熱烈な支持を集める怪奇譚を量産する注目株に平山夢明が挙げられる。驚くなかれ、新刊の発売日には発売を待ち焦がれたファンがつぎつぎに来店し、声をかけられるほどの人気ぶりだが、世間一般の知名度は残念ながら『新耳袋』ほどない。なぜか? とにかく衝撃度が格段に違うのだ。ショッキングで、後味が悪くて、厭な余韻が残る――その容赦のなさゆえ、限られた熱狂の輪から外には、なかなか広がっていかないのだ。 |
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天空への回廊 笹本稜平著 光文社文庫 ¥980 |
| 今さらこの本をリストアップするのは少々気がひける。この作品はあまたの書店員たちの絶賛を浴びた傑作で、もうこの本については書かされ尽くした感があるが、それでもやはり、徹夜本としてハズせない面白さがここにはある。天空への回廊・・・このタイトルだけで忽然とした高揚感が湧き上がってくるではないか。7000メートル以上の高地で5日間も生き抜くだけでなく、国家レベルでの得体のしれない作戦をやってのけるくだりには思わず「嘘だろー」と叫んでしまうが、そんな無茶な設定であるにもかかわらず、手に汗握りながらもページを繰る手を止められないのである。二転三転どころでない展開で、561ページでは悲鳴を上げてしまうのであった。酸素ボンベがほしくなるほどの徹夜本。読み終わるのが悲しくなるくらい夢中で読み通してしまうこと、間違いなし。 片山(千城台店) |
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国境 黒川博行著 講談社文庫 ¥1170 |
| 創元推理文庫で過去の作品が続々と文庫化され、しかも順調に重版を重ねる好調な売れ行きを示し、ますます人気の高まる黒川博行。『国境』は、これまでの傑作群のなかで飛びぬけて良質なミステリだが、発売時期の関係で恒例の年末ランキングでは内容に見合った正しい評価を受けることがなかった(ゆえに、本作を第一位にしたミステリチャンネル「闘うベスト10」はとってもとっても素晴らしい!)。 直木賞候補作にもなった『疫病神』(新潮文庫)の主人公コンビーー建設コンサルタント二宮とヤクザ桑原。彼らが詐欺師を追って向かった先は、なんと北朝鮮。そうなのだ、『国境』は、ほかに例のない北朝鮮ミステリなのである。信じがたいような北朝鮮事情のなかで飛び交う相変わらずの関西弁は最高。桑原にかかると、あの人物も「パーマデブ」のひと言でバッサリなのであった。 宇田川(本店) |
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鬼麿暫人剣 隆慶一郎著 新潮文庫 ¥540 |
| 新たな書き手が続々と登場し、さらには「月刊」とも云えるハイペースで作品を打ち出す作家までもが活躍する現在の時代小説シーンだが、その隆盛を眼の当たりにしてもなお、私はどこかで隆慶一郎の影を探し、その血を色濃く受け継いだ作家の誕生を心待ちにしているーーそんな想いが叶うはずもないと分かっていながら。 『鬼麿斬人剣』は、名刀工である師匠の遺言に従い、かつて打ってしまった駄刀を祈り捨てる旅にでた弟子――鬼麿の八番勝負を描いた痛快時代小説である。シンプルな構成を彩るダイナミックな殺陣はカッコよさ抜群!巨漢である鬼麿が長剣を抜刀し、軽々と振るうその豪快な様は、時代小説史に残る名シーンといっても過言ではない。隆慶一郎入門書として最適であるとともに、コミックや映像を凌駕する躍動的な活字物語として、小説を読み慣れていない若い世代にこそ広く読まれて欲しい逸品である。 宇田川(本店) |
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エニグマ奇襲指令 マイケル・バー=ゾウハ著 早川文庫 |
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| 冒険小説ファンにとっての「エニグマ」とは、本格ミステリファンにとっての「密室」や「嵐の山荘」のようなもので、耳にしただけで思わず心拍数が上がってしまう魅力的ガ ジェットである。『エニグマ奇襲指令』は、そんな暗号機エニグマを扱った代表的冒険小説。 第二次大戦下、この暗号機の必要に迫られた英国情報部は、フランスの怪盗ベルヴォアール男爵に奪取を依頼。こうしてドイツ情報部を相手にした大泥棒の、前代未聞の奇襲作戦が、占領下のフランスを舞台に繰り広げられるのだった――というあらすじだけで、すぐに読みたいと思わないひととはお友だちになりたくないくらい(笑)。 名作に値する優秀な冒険小説の登場がすっかり少なくなってしまった現在、とても貴重といえる傑作中の傑作である。 宇田川(本店) |
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ドゥームズデイ・ブック C・ウィリス 早川文庫 上・下各¥987 |
| 仕事がたて込んで、疲れているときに限って徹夜本に出会ってしまう。本書を読んだときもそうだった。もう本当に寝たいのに、続きが気になってページを捲る手を止められないのである。 オックスフォード大学史学部では研究対象の時代への時間遡行が行われている。女子学生キブリンは前人未踏の14世紀に送りこまれるが、時間遡行を行った技術者がウィルスに感染し、倒れてしまう。キブリンを救うため、ダンワージー教授は奔走する。ストーリーはシンプルだがテンポよく進むので、上下巻合計1140ページという長さも一気に読めてしまうこと請け合いである。愛すべき登場人物たち、伝染病の出所の謎、ペストの実態。物語を構成する全てが私たちを飽きさせることなくクライマックスまで引っ張っていく。本当に読み終わってしまうのがもったいないと思った。 青木(聖蹟桜ヶ丘店) |
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虎よ、虎よ アルフレッド・ベスター著 ハヤカワ文庫 ¥714 |
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| まったく、驚愕するしかない。この荒々しいSF作品の登場が、一九五六年――。そう、『虎よ、虎よ!』は、発表されてから半世紀が過ぎようとしているにもかかわらず、独創的なアイデア、パワフルなストーリー、そして心にやきつく強烈なキャラクターと、見事に三拍子の揃った完璧なエンターテインメント小説なのである。 二十五世紀――「ジョウント」と呼ばれるテレポーテーションの発明により、人類は莫大な富を獲得したが、それは同時に、伝染病の蔓延や、窃盗、略奪などの犯罪行為をも爆発的に増加されてしまい、惑星間戦争という無法状態を生み出すに至った。物語は、この狂騒を背景に突き進む、ひとりの男の壮絶な復讐劇だ。それはまるで、「大藪春彦が書いたSF作品」といった趣だが、最大の注目はラスト四十ページ。度肝を抜くイマジネーションは、いまだこの作品を越える熱量を備えたSF作品が現れていない現実を知るに、十二分であると断言できる! 宇田川(本店) |