禁断の官能本
10冊
この禁断の扉を、あなたは開けてしまいましたね・・・
めくるめく官能の世界へようこそ。そこは情欲と肉欲が入り乱れ、一度踏み入れたが最後、二度と抜け出せない世界を描いた魂の作品群をご紹介・・・
というか要するにときわ書房が選んだエロ本という訳ね。
エロス、背徳、インモラル・・・いけないと思いながらも誰もが陥る男と女(中には男と男もあり)の織り成す性の蟻地獄にあなたも、さあ、はまりなさい・・・



O譲の物語 ポーリーヌ・レアージュ著 河出文庫 ¥588
 「O譲の物語」を読むたびに、私の中で明らかになるのは、人を服従させたい自分だ。O譲が連れ去られ、目隠しをされ、城の中で何人もの男に犯されたとき、私はその男たちのような気分であった。はぅん、ぜひともO譲を所有したい・・・と鼻息も荒く思っていたとき、それは起こった。私は先日、バレーボールを観にいったのだが、片時も離れることができず、「O譲の物語」を鞄に忍ばせていた。感情はテロを警戒して、手荷物チェックをしていた。私はO譲の表紙に思いをはせた。あんなあられもない表紙を手荷物チェックのお姉さんに見られるわけにはいかない・・・
 私がこの後どうなったかはもはや紙数も尽きたので割愛させていただくが、皆さんも官能・性愛本を持ち歩く時にはカバーをかけましょうね。
(A譲)

枯葉の寝床 森茉莉著 講談社文庫 ¥987
 モリマリの作品には、美しいものしかでてきません。彼女の手にかかると、ガラスの破片は、きらきらした宝物の一つへと変貌するのです。
 お金持ちで作家のうえ学生、高圧的だけど実はレオにめろめろなギラン、彼が自分に溺れていることを知りつつも、奔放に振舞うレオ。この設定はまさに「ツボ」でしょう!恋人だからこそわかる、ちょっとした相手の羞恥心や媚が見事なまでに繊細に描かれているのです。巷に溢れるボーイズラブと比べても最強でしょう。露骨な描写はないのに、芸術的な慧眼でうっとり愛でるが如く、悩ましげな奥ゆかしさと恥じらいに満ちた官能的な「恋人たちの森」が広がっているのです。男同士ならではの、背徳を含んだ退廃的な愛が、たとえようもなく素敵なのです。ありふれた男女の恋愛小説など、もう読んではいられません。停止してしまったようなときのなかでの、甘く飽和した雰囲気は、まさに悩殺ものです。
(猫魔人)

肉体の洗礼 緑雨山人著 河出文庫 ¥482

 男の筆下ろし体験談小説の嚆矢は、ジョン・スミス『トルー・ラブ』だと言われている。明治四十一年に邦訳本が秘密出版され、石川啄木の日記のなかにもこれを読んだ感想が出てくるほどだ。その『トルー・ラブ』にインスパイアされて書かれたのが、本書『肉体の洗礼』である。
 ただしここで描かれるのは、女の初体験――すなわち処女喪失だ。
 戦前の鎌倉を舞台に、一夜、鎌倉の別荘に集まった有閑マダムたちが、ひょんなことから、それぞれの初夜を順番に告白していく、というのが物語の大筋である。茶の湯の先生との初体験あれば、不良少年に陵辱される話もある。もっとも過激なのは、女中の情事を盗み見ていたところを、憎からず思っていた遠縁の男に見つかるお嬢様の体験談だろう。お約束と言えばお約束だが、これがなかなかに凄い(笑)。
 秘本を代表する傑作のひとつである。
(凡野辰夫)

親指Pの修行時代 松浦理英子著 河出文庫 上¥591 下¥578

 親しい友人の死に見舞われた一人の女性に起こった異変・・・ある日突然、右足の親指がペニスになっていたー。このような展開で始まる本書を初めて読んだときの衝撃は、筆舌に尽くしがたいものであった。
 主人公の一実は、ある意味鈍感といわれるほどに無垢な魂の持ち主である。それまで違和感を抱きながらも信じてきた性の通念に対し、親指ペニスの出現以来、自分なりの性愛菅を成長、発展させてゆく。100人いれば性愛観も100通りのはずだが、世の中を支配しているパターン化された観念に対するもどかしさが一実を通して描かれ、知らず彼女の思考に深く共感する自分がいた。著者あとがきにあるように、男友達から集めたデータに基づく親指Pの快楽のシーンは興味深い。とはいえ、「他人の夢想じゃときめかない」ともいい得て妙である。読む間、自分の足の親指を何度も確認せずにはいられなかった。
(K太郎)

体験告白・性の手記@ 河出文庫 ¥600
 素人投稿集である。AVやポルノ映画の中の演技による虚構の絡みではなく、私達と変わらないオーディナリーピープルの、ちょっと他人にはいえない秘密の性生活である。
 まあオヤジ向けスポーツ紙の連載なので、Hシーンはそりゃもう濃厚にイヤラシク描かれているわけですが。
 そこに登場する人物、つまり投稿者は一様に己の性欲に忠実であり、例え不倫であっても自分の欲望を正当化し、悪びれたところがない。それが良いか悪いかは人によって様々だろうが、不道徳であるが故の切なさも抱えており、章によっては妙に文学的な内容もあったりする・・・いやほめすぎかな。
 テレクラで出逢った相手と不倫する人妻、子供時代の友達の母親との性体験を甘い思い出として告白する中年男、55歳にして娼婦となり、わけあり客との交わりを回想する女、などただヤラシイだけではない。不思議な味わいが確かにある・・・いや、いい訳かな。
(火野正兵衛)

美しい足に踏まれて ジェフ・ニコルソン著 扶桑社ミステリー ¥860
 「禁断の果実ほど甘い」などと云うが、いやいや足フェチ程度は「禁断」の域にも入らないさ。普通だよ、普通〜、わはは。などと思っていたのだが、どうもそうではないらしい(笑)。ああ、この発言で立派な足フェチ認められてしまった私である・・・。『美しい足に踏まれて』は、そんな私と同じ(笑)足フェチくんの独白が全体の半分以上を占め、終盤でいきなりミステリ的展開がズバババーン! と決まる、世界初の(そして最後の)足フェチミステリである。とにかく足フェチミステリである。とにかく足フェチという人種について、ここまで事細かに言及し、世間の偏見を覆すべく、真の「足フェチ道」を説いている小説は他に類を見ない(ここ誤読の可能性あり!)。一読して、きっとあなたも足の虜となり、足に魅せられたがゆえの悲劇と驚愕の結末をムラムラしながら何度も読み返すことだろう。さあ同志よ、いますぐレジへ! 探し求めた聖杯はココにある(笑)
筆エビル・スネコスリスキー

おんな秘帖 睦月影郎 祥伝社文庫 ¥560
 官能文庫ファンの大半がそうであるように、睦月影郎には、密かに注目してきた一人である。富島健夫の衣鉢を継ぐのが神崎京介なら、川上宗薫の正当な後継者となるのは、睦月影郎ではあるまいか。
 性愛描写がとにかく巧い。ねっちり、こってり、とことん描く。勝目梓もその意味では実に巧いが、如何せん本筋の物語をしっかり書きすぎる。つまり小説としては面白いのだけれども、エロとしてはちょっと物足りなかったりするのである。
 その点、睦月はエロ小説の本質をよく弁えている。全篇、濡れの連続で、読者を一瞬たりとも倦ませないのだ。それはもう、サービス精神が旺盛なのである。
 なかでもこの『秘帖』シリーズは、シャワーも洗浄器もない江戸時代を舞台にすることで「おんなの匂い」にこだわる睦月フェティシズムが炸裂、同好の士には堪らない読み物に仕上がっている。
(凡野辰夫)

後家長屋 町之介慕情 阿部牧郎著 講談社文庫 ¥580
 舞台は江戸時代、町人文化が華やかなりし大坂。本屋の泰平堂を営む27歳の町之介は、母の徳江と一人息子の才太郎の3人暮らし。本屋稼業を興す前は奥州陸奥は水戸藩の武士であったが、貧乏藩の借金方である豪商の手代を父が斬り、父は切腹、家は取り潰しにあうというなかなかにハードな身の上である。それゆえに、因縁の豪商よりも富裕になって見返してやる、という夢をもつ。となると、町之介の出世と敵討ちの物語・・・いえいえ、そうではありませぬ。後家長屋というなにやら隠微なタイトルよろしく、町之介が得意先を開拓してゆく先々で起こる色っぽい出来事に期待を裏切りません。各章に水戸黄門の入浴場面の如く登場する絶頂シーンにはドギマギ。だが単なるエロ小説で終わらないのは、当時の風俗がリアルに描かれているからであろう。古きよき時代だったのだなあ、と性に自由な大坂町人に思いを馳せるのであった。
K太郎

13のエロチカ 坂東眞砂子著 角川文庫 ¥540
 坂東眞砂子の中編集『葛橋』を読んだときの興奮は、今でも忘れられない。表題作の一シーンーー久しぶりに再会した同級生同士が、農家の地下倉庫でふとしたきっかけから男女の関係になる、あの名場面だ。ここに炸裂するエロティシズムは、男の生理をまさに直撃するものだった。官能小説の新たな書き手として、著者の可能性を改めて認識した瞬間である。
 坂東眞砂子が官能小説集『13のエロチカ』を発表したのは、それから数年後のことだ。
 これが予想以上の傑作だった。女性作家の官能小説を読んでも、興奮することはめったにない私が、これには参った。官能小説の成否は、「有体にいえば、ペニスが立つか立たないかだからね」(本書収録「ル・スーティエン・ゴルジュ・ブル」)。
 別の意味でもこれも、電車の中では読めない禁電車本か。なんちゃって(笑)。
(凡野辰夫)

女薫の旅 神崎京介著 講談社文庫 ¥620
 ありえねーっ!
 この小説を読んで感想を一言で述べよといわれたらこういうしかない。だってこの主人公、女にモテすぎだぜ?
 十五歳の主人公山神大地君はうら若き童貞少年・・・だったが、行く先々で女と出逢い、情事を重ねていく。もっとわかり易く言やぁ、女と出逢ったが最後、後はスケベシーンの洪水という期待通りの展開。こうして大地の長い長い女体遍歴の旅が始まるのであった。
 初体験の相手は中学の教師。先生にたっぷりと可愛がられた次は学校の先輩、そして地元の旅館の若女将と次から次へと女たちからの誘惑に誘われるままにことを遂げていくタフな大地君だ。これでまだ一巻目。ちょっとめまいがしてきそうだが本章のラスト、先生にそっと別れを告げて去っていく姿は、少年がこれから大人になっていくための旅立ちの朝を思わせてちょっと切なくなってくる。
 青春官能長編大河の傑作としてぜひ全巻読破にチャレンジして下さい。
(火野正兵衛)