| この夏のときわのオススメ まずはこの20冊!2008 「ときわ書房の夏の文庫100冊」も今年で6回目。 2003年の第1回以来、[1テーマ10作品×10テーマ=100作品]という格好で作品を選定してきているが、このスタイルだと、強力にオススメしたいのに、どうしてもテーマごとのラインナップからは洩れてしまうというケースが出てくる。テーマも厳選し、作品も揉んだはずなのに、何か本当にオススメしたい本がオススメできていないようなもどかしい感じがつきまとう。そこで今回は、テーマはテーマとしつつ、それ以外にも各店スタッフが強くプッシュしたいと思う本を上げてもらうことにした。そこから厳選したのが以下の20作品。いずれ劣らぬ傑作、快作、名作ぞろい。どれをとっても損はさせません。というわけで、この夏は、まずはこの20冊からどうぞ |
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『黄昏のベルリン』 連城三紀彦 文春文庫 ¥840 |
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『妖異金瓶梅』 『狗神』 坂東眞砂子 角川文庫 ¥525 |
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『「クロック城」殺人事件』 北山猛邦 講談社文庫 ¥730 |
| 死体をひとつ隠すとして一番適した場所にあなたはどこを選ぶだろうか。この質問を識っているひとは「戦場」と答えるだろう。つまり多くの戦死体の中に紛れさせてしまえばいいというわけだ。スケールのサイズに囚われてしまうとこの答えはなかなか出てこない。「死体をひとつ」という個のスケールと「戦場」という特大のスケールが結びつかないからだ。例えば手品師が白い内装の部屋で「あなたを驚かせてみせましょう」といってテーブルマジックを始めたとする。あなたは「驚いてなるものか」と手品師の手元をじっと見つめている。すると手品師はテーブルマジックを途中で止めて突然「さあいかがですか?」と訊いてくる。何を言っているのかといぶかしむあなたはテーブルから顔を上げて愕然とする。いつの間にか部屋の内装が眼にも鮮やかな赤に変わっていたからだ。『黄昏のベルリン』を読むあなたは絶対騙される。ここに書いた文章の真意は果たして……。 栗田(商品政策部) |
『リング』だの『呪怨』だの、ハリウッドでリメイクされた作品がジャパネスク・ホラーの代表作みたいに思われているとすれば、これほど悲しい現実はない。小説として、作品として、遥かに素晴らしい坂東眞砂子や小池真理子や篠田節子は、いったいどうなるのだ。なかでもいま忘れられがちなのが、大ヒットを持たない坂東眞砂子だろう。初期の『死国』やこの『狗神』は、貞子が束になってもかなわない傑作、と断言するにやぶさかではない。女性らしい細やかな感性と土俗的風土を絶妙に溶け込ませた描写力は、この作家の類い希な才能をまざまざと見せ付けてくれる。そのおどろおどろしさ≠ヘ横溝正史を彷彿とさせる。映画化された『狗神』はそれほどでもないけど、本で読むなら文句なくこちらでしょう。石が浮かんで木の葉が沈む理不尽な世の中は、そろそろ終わりにしたいものだ。坂東眞砂子を読まずして、ジャパンホラーを語るなかれ! 茶木(本店) |
冒頭から怪しげな世界観、人物、道具立てが満載しているが、これはれっきとした本格ミステリである事を明記したい。一見、最近流行のライトノベルのようなファンタジー溢れる世界観である為、拒否反応を起こされる方もいるだろう。だが、本格ミステリもファンタジーやSF要素が溢れているし(殺人が起こる館や、因習渦巻く村など、それがファンタジーやSFでなくてなんだというのか)、実際にSF世界やファンタジー世界を舞台にした本格ミステリ物は数多く出版されている。この作品の世界観は、今の時代に合った本格ものに相応しいものといって差し支えはないだろう。ネタバレになってしまうので明記は出来ないが、トリックも古くから続く由緒正しき本格物の血筋を引いている。昔の本格物を読んでおられた方も、そうでない方も、新しい時代の本格推理小説を堪能して頂きたい。 太田(瑞江店) |
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『妖異金瓶梅』 山田風太郎 扶桑社文庫 ¥820 |
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『スカイジャック』 トニー・ケンリック 角川文庫 ¥820 |
『ベルリン飛行指令』 佐々木譲 新潮文庫 ¥780 |
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| ミステリの連作というと、一番よくあるのが、探偵役や主要登場人物が共通するもの。それから登場人物は違うが舞台となる土地や街が共通しているもの、あとは、一つひとつは別々の話として完結していると見えるのに全体を観るとそれらの背景にあった別の物語が浮かび上がるもの。これはなかなか難しいが、山田風太郎はこの手も得意だった。で、『妖異金瓶梅』はというと、分類するならば一番最初のものに属する。ならばありふれているかというと、とんでもない。二話め、三話めと読み進むうちに、「この作者はひょっとしてとんでもないことをしようとしているのでは」と、あなたはきっと思うはずだ。四話・五話めではその疑問は確信と驚嘆に、全編読了する頃には賞賛に変わっているはずだ。山田風太郎という人は実にさまざまなカテゴリの小説を書き、その多くで傑作を残している娯楽小説の大巨人だが、なかでもこれは異形の偉業。いや駄洒落じゃなくて。必読です。 近藤(新松戸店) |
なぜトニー・ケンリックを読まないのか理由が解らない。奇想とユーモアと弾む会話とサプライズを一つに纏めた軽妙洒脱な物語はまさにエンターテインメントの理想的な姿と言っても過言ではない。もし疑うなら古きよき喜劇のような軽やかなれど奥深く味わいある風格と鮮やかな手品の妙を備えた傑作『スカイジャック』を読んでみるといい。三百六十人を乗せたジャンボ旅客機が忽然と消えてしまい巨額のダイヤモンドを要求する手紙が届くも捜査機関には特に打つ手もなく頭を抱えていると成功報酬目当てで現れた開店休業中の若き弁護士と元妻兼秘書のコンビがうっかり事件に深入りしてしまい……。つまらん小説を読んで「小説はつまらん」などと口にする愚かしい者がいるようだが少なくともこの作品を読むことであなたはその枠から抜け出すことができよう。そして連中に向かって「こんな面白い小説を知らないとは」と憐れみの眼差しでもくれてやればいい。 栗田(商品政策部) |
本書は、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説大賞をトリプル受賞した『エトロフ発緊急電』に先駆け、著者が戦争冒険小説に初めて挑んだ記念碑的傑作だ。『エトロフ発緊急電』がケン・フォレット『針の眼』へのオマージュであることは知られているが、本書はジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』を意識して書かれたものと言える。いずれも冒頭の導入部で、作家本人が第二次大戦下の歴史の闇に埋もれた、ある事実≠提示することから物語は始まるのだ。それがかたやチャーチル誘拐作戦に、かたや零戦のベルリンへの極秘飛行指令に繋がっていく、という仕掛けである。ドイツ軍部隊によるイギリス本土上陸作戦と同じく、張り巡らされた包囲網のもと零戦をドイツまで飛ばすことは不可能に近い。その不可能を可能にする過程が、実に読ませる。両者の根底に横溢する騎士道精神が、傑作を傑作たらしむる、最大の要因だろう。 茶木(本店) |
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『脱出記』 スラヴォミール・ラヴィッツ ヴィレッジ・ブックス ¥820 |
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『アフリカン・ゲーム・カートリッジズ』 深見真 角川文庫 ¥740 |
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『雪沼とその周辺』 堀江孝幸 新潮文庫 ¥380 |
| 人の話なんてものには多かれ少なかれ尾鰭が付くものだ。そして尾鰭が付くと途端に陳腐になって信憑性がなくなる。しかし中には格段の面白さを得て時代も国も越えて語り継がれてしまうほどの圧倒的魅力を持った話も存在する。この「脱出記」がまさにそれである。著者が語った話を第三者が書き留めた文章であるから実はどこまでが真実なのかは定かではない。尾鰭の付き具合を突き詰めようにも時間が経ち過ぎて今ではその術もないのだ。だがこのあまりに過酷な脱出行は読み始めた途端に陳腐になって信憑性がなくなるどころか読めば読むほど先を追わずにはいられないほどの迫力で真に迫ってくるから驚く。一級の冒険小説が荒唐無稽にならないラインで踏み止まるべくリアリティに足を掛けるようにこのノンフィクションは物語の躍動を得る為にフィクションに足を掛けているのかもしれない。この面白さなら赦す。 栗田(商品政策部) |
ただの「飾り」として登場人物に銃器を持たせて物語を「派手」にするために銃撃戦をお手軽に描く。そんなのはまったく唾棄すべき最低の所業だ。出来の悪いエロにも劣る最悪の罪だ。くたばれ。活字だろうが映像だろうがはらわたが煮えくり返ることこの上ない。なぜ持つのか。なぜ撃つのか。なぜその人間にはそのモデルでその口径でその戦いに挑まねばならないのか。「飾り」と「派手」なだけの連中には決して思い至るまい。深見真は銃を識っている。銃撃戦を識っている。大藪春彦が没して以降真に銃器へ執着する者が現代に勝ち得た寄る辺がここにある。無から銃器を生み出す「銃使い」が標的に狙いを付けてトリガーを引き絞る心情。発火した瞬間の反動と薬莢の飛翔。銃火の閃きと霞む硝煙。弾着と仕留めた手応え。これらが白熱の場面を息づかせて読む者の血肉となる。これが銃だ。これが銃撃戦だ。俺を昂らせる「本物」がここにはいっぱいに詰まっているのだ。 栗田(商品政策部) |
曇りの日は、声が遠くまで届かない。そして、堀江敏幸の小説はいつも曇っている。そんな気がする。雪沼で暮らすさまざまな職種、それぞれの事情を抱えた人々を描く連作小説集。ボーリング場の主人、料理教室の先生、消火器の販売所…。どれもわかるようなわからないような世界だ。私達は、小説を読みながらいつもその世界の住人になったような気がするけれど、この物語ではそれが難しいかもしれない。だってあまりにも緻密で、あまりにも奥が深いから。水溜りのなかにもうひとつの世界を覗こうとしたときみたいに、さみしい気持ちになる。晴れた空にも曇りは隠れている。 後藤(IY船橋店) |
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『時雨の記』 中里恒子 文春文庫 ¥500 |
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『絵島生島』上・下 舟橋聖一 新潮文庫 上¥700・下660 |
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『一夢庵風流記』 隆慶一郎 新潮文庫 ¥780 |
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20代前半の頃、年長の友人から「古本屋で見つけて」、と昭和五二年初版、翌年三月七刷発行の旧仮名遣いの一冊の本を譲り受けた。それがこの「時雨の記」であった。私にとって理想の女性、多江との出会いである。一組の男女の邂逅と別離。「『時雨の記』によせて」の中で宇野千代は、「ショッキングな事件を最大限に知的に扱ったもの」と書いているのはさすがである。中に「社長の資格でうちへいらしゃっても駄目よ」という多江に、壬生が「男の資格でゆきますよ」と答える心に残るやりとりがある。壬生の情熱と、大人の男性としての気品を感じさせる。数ある品格本よりも、品格を教えてくれる、などと言っては書店員失格か。個人的には古書店で旧かな遣いのものを探して読んでいただきたい。読むたびに、「時雨」にこめられた二重三重の思いが胸に深く響いてくる。何度でも読み返したい珠玉の小説である。現在、中里作品がほぼ入手困難なのは誠に残念である。 片山(千城台店) |
歴史に名高い絵島疑獄については様々な文献で溢れているが、自分の偏った知識を満たしてくれるものとはまだ出会っていない気がする、そんなとき、今年の本屋大賞会場での幸運な出会い。復刊への興奮冷めやらぬ間に翌日職場で早速購入。物語は絵島がまだ「お初」と呼ばれていた頃、江戸城の門をくぐるところから始まる。ここでの彼女は人を疑うことを知らない清純な女性として描かれ、ハラハラさせられるほどの世間知らずぶりが後半、宮路の罠へ嵌る伏線となる。女性の出世物語としてとり上げられることもあるが、そんな読み方はご無用。数年前、桜の時期に訪れた高遠城で晩年幽閉されていた場所を見て、悪女としての人物像が刷り込まれていた私は、かつて大奥で権勢をふるった大年寄がこんなところで質素に暮らすなんてちょっと想像できないな、という悲哀でなく違和感を覚えた理由は、この作品を読むことで解消された。上下巻一気読み、寝不足何卒御用心。 片山(千城台店) |
原哲夫のコミック『花の慶次―雲のかなたに―』がここにきてまた、売れ始めている。連載開始時からすでに二十年、文庫版コミックが発売されてほぼ十年の時が経ているにもかかわらずだ。理由はもちろん、パチンコにある。このパチンコ『花の慶次』がまあ、鬼のように、出たり出なかったりするんである。連荘確率なんと80%……なんて話はどうでもいいけど、この機種の魅力にどっぷり嵌っているファンは、決して少なくないと思う。来年のNHK大河ドラマの主人公・直江兼続の名前もこのパチンコ台ではじめて知ったという読者も、珍しくないだろう……なんて話も、この際どうでもいい。これだけ多くのファンを獲得した最大の要因は、原案のコミックにある。そのコミックが大ヒットした最大の理由は、原作たる本書にある。隆慶一郎の作品を知らないのは、酒好きが極上のコニャックの味を知らないのと同じくらい不幸なことだ。まずは本書から、読むべし! 茶木(本店) |
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『豪快茶人伝』 火坂雅志 角川文庫 ¥700 |
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『玉撞き屋の千代さん』 南川泰三 集英社文庫 ¥650 |
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『なつかしい芸人たち』 色川武大 新潮文庫 ¥620 |
| 茶人と聞いてどんな印象をもたれるだろう? 穏やかな善人を想像される方も多いのではないだろうか。 だが、本書に登場する人物が、みな強烈な個性の曲者揃いなのである。 豊臣秀吉と対立して、町人でありながら切腹を命じられた『千利休』、悪口雑言のために命を縮めた『山上宗二』、釜に火薬を詰めて城の天守閣に上り、茶釜もろとも爆死して果てた松永弾正など、強烈な生き方、死に方をした男達ばかりである。ぜひ、個性豊かな茶人たちをご堪能あれ! 中前(瑞江店) |
本書のタイトルはおよそ本読みの食指を動かすようなものではない。放送作家界の大御所である著者の母親の話、と聞けばなおさらだろう。だがしかし、これが実に読ませるのだ。一言で言えば、女手ひとつで家族を支え、戦後を雄々しく生き抜いた女傑の半生記である。女手ひとつ、と書いたが、実は夫がいる。が、この夫、とんでもない男で、姿かたちはいいのだが、堪え性がなく、働くのが嫌いで習い事や趣味にウツツを抜かす、絵に描いたような船場のぼんぼん。しかも妻がいるのに千代さんに求婚し、既婚者であることを隠して結婚するのだ。そのうえ両親を早くに亡くした千代さんの実家というのが複雑で、次々に不幸のタネを持ち込んでくる。波乱万丈まさに極まれり、である。が、どんな苦境に陥っても、千代さんは関西人特有のバイタリティで、明るく前向きに生き抜いていく。大いに笑わせホロリとさせる、松竹新喜劇のような快作。これぞ隠れたオススメ本だ。 茶木(本店) |
エノケン、ロッパにトニー谷、春風亭柳朝にエンタツ・アチャコ……。本書に登場する人物のおよそ三分の二は、名のみぞ知る芸人たちだ。昔の映像で観たことはあっても、その現役時代を知るものではない。それでもこの芸人列伝には、えもいわれず魅了される。「自分と同じように、社会から落ちこぼれて窮々としている人は居ないものかと思う。それらしき人間がみつかると、同胞をみつけたように安心してその人の行末を眺めていた」という著者の仲間意識が、作品の根底に横たわっているからだろう。「このじだらくな人がどうやって生きていくのか、なんだかじだらくの罰が当たって転落してしまいそうで、感情移入をしたくなる」のは、何も著者ばかりではない。読者も同様だからである。愛おしくて、切なくて、どこか哀しい芸人たちの人物評が、読むものの心を強く揺さぶるのだ。さすがは色川武大。フーテンの寅≠フ原点、ここにあり、である。 茶木(本店) |
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『はれた日は学校を休んで』 西原理恵子 双葉文庫 ¥580 |
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『封印作品の謎』 安藤健二 だいわ文庫 ¥840 |
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『わたしの旅に何をする。』 宮田珠己 幻冬舎文庫 ¥560 |
| 九〇年代、奢れる高級料理店に天誅を下す『恨ミシュラン』で大ブレイク。今も大河家族漫画「毎日かあさん」の連載を始め、本店店長茶木則雄の名著(迷著?)『帰りたくない』の表紙でもおなじみの西原理恵子画伯。本書は彼女の珠玉のような初期傑作短編集であります。タイトルにもなっている連作「晴れた日は学校を休んで」には、学校、友人、家族等に微妙な違和感を抱き揺れ動く少女の心理が、これがサイバラ?(失礼!)と目を疑う程の繊細なタッチで描かれています。学校嫌いの少女の物語を堂々連載した「小学六年生」に拍手! 最終話「油性インクで」がもたらす爽快感は無類の物。同時代に生きながら、この感動を共有できないのは、もはや不幸であるとしか云いようがありません。夏休みの宿題を前に途方に暮れているキミ。我が子の成長にとまどうお父さんお母さん。そして、いつだってあの頃の心を失っていない全ての人に、この本を贈ります。 斉藤美穂(いわき店お客様) |
「封印」と言うと怪しげに思えるが、要は「自主規制」された作品だ。この本では比較的昔の作品が紹介されているが、現在でも「自主規制」は時折報道されている。この本では、特撮物、漫画などの取っ付き易いところから、「表現の自由」「差別表現」を論じている。作品が自主規制に至った過程は様々だ。しかし、どの作品についても共通するのは製作した人間は誇りを持って自分の作品は素晴らしいと言えるのか。また、作品を受け止める側がどんな受け止め方をするか真剣に考えているか。そして受け止める側も、その作品を真摯な目で見ているかが問われ、どれかが欠けていたから、このような結末になってしまったのだと、このルポでは示している。差別表現か表現の自由かという論争は現在でもメディアを騒がせている。敬遠しがちな問題ではあるが、小説、漫画、映画などを楽しんでいる以上、一回くらいは考えなくてはいけない問題であるのかもしれない。 太田(瑞江店) |
ノンフィクションというと重いものばかりのような気がしがちだがエンターテインメント精神に溢れた軽妙なものも多い。中でも宮田珠己はエンターテインメントノンフィクション略して「エンタメノンフ」の書き手としてまさに横綱級と言える。この脱力エッセイの笑いの訴求力たるや独特の言い回しと合わさり天下無双。また一度読むと全著作を漁りたくなる中毒性の高さも天下無双レベル。サラリーマン時代から有給を使いまくって旅をしまくっていた宮田珠己=タマキングがついに職を辞して旅にのめり込んでいくや笑いの神がこれでもかと降臨する。不安定で先の見えない世の中だ。怯えて終わる位ならあれこれ振り切ってでも何かをした方がいいのかもしれない。悶々と日常に埋もれて腐っている諸君。いますぐ本書を手に取って笑いに笑って自分の今の生き方を見つめ直してみるのもいいかもしれない。ジメジメ腐った不安定か。活き活きした不安定か。さて。 栗田(商品政策部) |
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『デカくて悪いか』 いじりめぐみ 角川文庫 ¥500 |
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『ビギナーズ・クラシックス源氏物語』 角川書店・編 角川庫 ¥1000 |
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| 例えばここが大空襲の後の焼け野原だとしよう。あなたは家も家族も一瞬にして失い独りただ呆然とするしかない。これからどうしたらいいのか。どうやって生きていけばいいのか。襲い掛かる不安と無力感に思わず屈してしまいそうなそんな時……。突然どこからか威勢のいいオバちゃんが足音も高らかに現れてあなたの横に立つと「大丈夫大丈夫。さあこれからだよ!」と背中をバシンと力強く叩かれて思わずよろけつつあなたはふと思う。「あ。なんか……どうにかなるかも……」と。この猛妻いじりめぐみの国際結婚エッセイが持つ怒濤のパワーにはそれに似たものがある。根拠のない突き抜けた無敵の前向きさがカンフル剤となって作用する。いま最強のエッセイだろう。六月二十五日には猛妻エッセイ第二弾『デブで悪いか!』(角川文庫)も発売される。この天下御免の「笑撃」と「言葉の猛威」を味わって些細な悩みや弱気を吹き飛ばして欲しい。 栗田(商品政策部) |
今年は源氏物語千年紀。豪華愛蔵版源氏物語の製本に大忙しの紫式部に、チョイ悪貴族の藤原公任が「この辺に紫ちゃんはいてはりまっか?」とタメ口叩いて丁度千年と云う次第。雑誌の特集、関連本の発行、記念イベントと世はお祭り騒ぎですが、全部読み通すには時間も根性も無くて、という方が多いはず。某週刊誌で「さっくり読める源氏物語ありますか」と書店で尋ねたという主婦の方の投稿を見て、笑いながら共感してしまいました。そこで、原文の格調高さを味わいつつ、さっくり読めるこの一冊を紹介します。各巻の粗筋に、名場面には本文と訳文付き、人物相関図や年表もばっちり。より詳しく学びたい人のための関連本や、物語の舞台となった場所の説明に地図まで載っています。熱帯夜の枕代わりにするも良し。本書を片手に盛夏の京都を旅するのも、又一興。千年紀に生まれ合わせた幸運を、この夏は思いっ切り楽しんでしまいましょう。 斉藤美穂(いわき店お客様) |